2022年4月19日中日新聞から
【ips 腰痛治療に光】
大阪大の妻木範行教授(生化学)らのチームは
18日、人工多能性幹細胞(ips細胞)で椎間板の
中心にある組織をつくり、ラットに移植して
組織を再生することに成功したと発表した。
腰痛治療への応用が期待され、三年後をめどに
人で臨床試験(治療)を始める準備に入りたい
という。
人の脊椎は骨と椎間板が交互に
積み重なった構造。
それぞれの椎間板の中心には クッション
の役割を果たす「髄核」と呼ばれる組織が
あるが、加齢などで変性したり消失したり
すると腰痛の原因となる。
チームは人の脊椎に似た構造をもつ
ラットの尾で実験。
尾から髄核を取り除いたラットと、
除去後に人のips細胞からつくった髄核を
移植したラットを比較。
六ヶ月後、髄核を除去したラットは
椎間板が変性していたが、移植したラット
は椎間板の構造が保たれていた。
チームによると、日本では約1300万人が
腰痛を患い、うち2~4割は椎間板の
変性が原因という。
妻木教授は「髄核は薬では再生できない。
新たな治療法候補の一つを示した」としている。
椎間板
椎間板の解剖学
椎間板は周りを取り巻く繊維輪と中の髄核で形成される。
神経支配は脊椎洞神経が繊維輪の外側2~3枚に分布しているが
この神経は交通枝を出し1つ上の椎骨と神経支配が重なる。
椎間板の病態
25歳を過ぎると年齢と共に椎間板の水分が抜けてくるため
30代以降の椎間板ヘルニアが少なくなると言われている。
しかし、最近、老化に伴い椎間板の高さが減少した場合
椎間孔の狭窄が起こっているため、わずかな膨隆でも神経に
影響を与える症例が増加している。
また加齢にとももに脊柱管が狭窄してくると椎間板の膨隆の
程度が少なくても激しい症状が出現することが多い。
椎間板ヘルニアの分類
1.椎間板の膨隆
最も多い症例で整形外科で椎間板の初期の状態。
椎間板になりかけている、椎間板症といわれたような
場合はこれに当てはまる。
MRIでは3mmぐらいの突出として確認される。
痛みが腰部に限局され放散痛、シビレは臀部でとまっている。
せき、くしゃみで痛みが出現する。
2.椎間板の突出
痛みが下肢に及んでいる。
MRIでは5㎜ぐらいにまで大きく突出していることが
確認されている。
3.椎間板が飛び散ったもの
腰部の痛みが無く、下肢の痛み、シビレが強い。
椎間板治療のモデル
マッケンジー理論
屈曲により椎間板後方突出が起こる
伸展により椎間板が元の位置に戻る
マッケンジー体操
比較的椎間板が弾力を保っている場合に適応する
パンジャビー理論
伸展により椎間板後方突出が起こる
屈曲により椎間板が元の位置に戻る
ウイリアム体操
椎間板が弾力を失っている場合に適応する